桜桃 現代語訳
太宰治(だざいおさむ)・1989年
AI生成この訳はAI(claude-sonnet-4-6)が原文から生成したものです(生成日: 2026-07-23)
私は山を見上げ、目を向ける。
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われ、山にむかいて、目を挙ぐ。
――詩篇、第百二十一。
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――詩篇、第百二十一。
子供より親のほうが大事だ、と思いたい。
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子供より親が大事、と思いたい。
子供のために生きる、なんて古くさい道徳家みたいなことをいかにもけなげに考えてみても、実際は、子供よりもその親のほうがずっと弱いのだ。
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子供のために、などと古風な道学者みたいな事を殊勝らしく考えてみても、何、子供よりも、その親のほうが弱いのだ。
少なくとも、私の家ではそうだ。
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少くとも、私の家庭においては、そうである。
まさか、自分が年を取ってから子供に助けてもらおう、世話になろうなどという厚かましい下心は全然持ってないのだけれど、この父親は、家の中でいつも子供たちのご機嫌ばかりうかがっている。
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まさか、自分が老人になってから、子供に助けられ、世話になろうなどという図々しい虫のよい下心は、まったく持ち合わせてはいないけれども、この親は、その家庭において、常に子供たちのご機嫌ばかり伺っている。
子供、といっても、うちの子供たちはみんなまだとても幼い。
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子供、といっても、私のところの子供たちは、皆まだひどく幼い。
長女は七歳、長男は四歳、次女は一歳だ。
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長女は七歳、長男は四歳、次女は一歳である。
それでも、もうそれぞれが両親を圧倒しかけている。
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それでも、既にそれぞれ、両親を圧倒し掛けている。
父と母は、まるで子供たちの使用人のような有様だ。
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父と母は、さながら子供たちの下男下女の趣きを呈しているのである。
夏、家族全員が三畳間に集まり、大にぎやかで大混乱の夕食を食べていると、父はタオルで顔の汗をやたらに拭いて、
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夏、家族全部三畳間に集まり、大にぎやか、大混乱の夕食をしたため、父はタオルでやたらに顔の汗を拭き、
「飯を食って大汗をかくとはみっともない、と川柳にあったけれど、これだけ子供たちがうるさくては、いくら上品なお父さんだって汗が出る」
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「めし食って大汗かくもげびた事、と柳多留にあったけれども、どうも、こんなに子供たちがうるさくては、いかにお上品なお父さんといえども、汗が流れる」
と、一人でぶつぶつ不満を言い始める。
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と、ひとりぶつぶつ不平を言い出す。
母は一歳の次女におっぱいをあげながら、お父さんと長女と長男の世話をするやら、子供たちがこぼしたものを拭くやら、拾うやら、鼻をかんでやるやら、信じられないくらい猛烈に働いて、
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母は、一歳の次女におっぱいを含ませながら、そうして、お父さんと長女と長男のお給仕をするやら、子供たちのこぼしたものを拭くやら、拾うやら、鼻をかんでやるやら、八面六臂のすさまじい働きをして、
「お父さんは鼻に一番汗をかくみたいね。いつも忙しそうに鼻を拭いていらっしゃる」
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「お父さんは、お鼻に一ばん汗をおかきになるようね。いつも、せわしくお鼻を拭いていらっしゃる」
父は苦笑して、
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父は苦笑して、
「それじゃ、お前はどこだ。内ももかい?」
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「それじゃ、お前はどこだ。内股かね?」
「まあ、上品なお父さんだこと」
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「お上品なお父さんですこと」
「いや、医学的な話じゃないか。上品も下品もない」
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「いや、何もお前、医学的な話じゃないか。上品も下品も無い」
「私はね」
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「私はね」
と母は少しまじめな顔になって、
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と母は少しまじめな顔になり、
「この、お乳とお乳のあいだに……涙の谷……」
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「この、お乳とお乳のあいだに、……涙の谷、……」
涙の谷。
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涙の谷。
父は黙ったまま、食事を続けた。
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父は黙して、食事をつづけた。
私は家にいるとき、いつも冗談を言っている。
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私は家庭に在っては、いつも冗談を言っている。
それこそ「心の中では悩み苦しむ」
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それこそ「心には悩みわずらう」
ことが多いから、「表面では楽しそうに」
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事の多いゆえに、「おもてには快楽」
見せないわけにはいかない、とでも言おうか。
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をよそわざるを得ない、とでも言おうか。
いや、家にいるときだけじゃなく、人と会うときも、心がどんなにつらくても、体がどんなに苦しくても、ほとんど必死で楽しい雰囲気を作ろうとする。
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いや、家庭に在る時ばかりでなく、私は人に接する時でも、心がどんなにつらくても、からだがどんなに苦しくても、ほとんど必死で、楽しい雰囲気を創る事に努力する。
そして、客と別れた後、私は疲れてふらつきながら、お金のこと、道徳のこと、自殺のことを考える。
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そうして、客とわかれた後、私は疲労によろめき、お金の事、道徳の事、自殺の事を考える。
いや、それは人と会う場合だけじゃない。
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いや、それは人に接する場合だけではない。
小説を書くときも同じだ。
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小説を書く時も、それと同じである。
私は悲しいときに、かえって軽くて楽しい物語を書こうと努力する。
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私は、悲しい時に、かえって軽い楽しい物語の創造に努力する。
自分ではそれが最高のサービスのつもりでいるのだが、人はそれに気づかず、太宰という作家も最近は軽薄だ、面白さだけで読者を引きつける、ひどく安易だ、と私を見下す。
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自分では、もっとも、おいしい奉仕のつもりでいるのだが、人はそれに気づかず、太宰という作家も、このごろは軽薄である、面白さだけで読者を釣る、すこぶる安易、と私をさげすむ。
人間が人間に奉仕するというのは、悪いことだろうか。
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人間が、人間に奉仕するというのは、悪い事であろうか。
もったいぶって、なかなか笑わないというのが良いことだろうか。
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もったいぶって、なかなか笑わぬというのは、善い事であろうか。
つまり私は、堅苦しくて白けた、気まずい状況に耐えられないのだ。
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つまり、私は、糞真面目で興覚めな、気まずい事に堪え切れないのだ。
私は自分の家でも絶えず冗談を言い、薄氷を踏む思いで冗談を言い続け、一部の読者や批評家の想像を裏切り、私の部屋の畳は新しく、机の上は整頓され、夫婦はいたわり合い尊敬し合い、夫が妻を殴ったことなどはもちろんなく、出て行け・出て行きます、などという荒々しい口喧嘩をしたことさえ一度もなく、父も母も負けずに子供を可愛がり、子供たちも父母に陽気によくなついている。
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私は、私の家庭においても、絶えず冗談を言い、薄氷を踏む思いで冗談を言い、一部の読者、批評家の想像を裏切り、私の部屋の畳は新しく、机上は整頓せられ、夫婦はいたわり、尊敬し合い、夫は妻を打った事など無いのは無論、出て行け、出て行きます、などの乱暴な口争いした事さえ一度も無かったし、父も母も負けずに子供を可愛がり、子供たちも父母に陽気によくなつく。
しかし、これは外から見た姿だ。
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しかし、これは外見。
母が胸を開けると涙の谷があり、父の寝汗もますますひどくなり、夫婦はお互いに相手の苦しみをわかっているのだが、そこに触れないよう気をつけながら、父が冗談を言えば母も笑う。
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母が胸をあけると、涙の谷、父の寝汗も、いよいよひどく、夫婦は互いに相手の苦痛を知っているのだが、それに、さわらないように努めて、父が冗談を言えば、母も笑う。
しかし、あのとき涙の谷、と母に言われて父は黙り、何か冗談を言って切り返そうとしても、すぐにうまい言葉が浮かばず、黙り続けるとますます気まずさが積もり、あの「わきまえある人間」を自任していた
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しかし、その時、涙の谷、と母に言われて父は黙し、何か冗談を言って切りかえそうと思っても、とっさにうまい言葉が浮かばず、黙しつづけると、いよいよ気まずさが積り、さすがの「通人」
父もとうとう、まじめな顔になってしまって、
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の父も、とうとう、まじめな顔になってしまって、
「誰か、人を雇いなさい。どうしても、そうしなければいけない」
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「誰か、人を雇いなさい。どうしたって、そうしなければ、いけない」
と、母の機嫌を損ねないようにおっかなびっくり、ひとりごとのようにつぶやく。
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と、母の機嫌を損じないように、おっかなびっくり、ひとりごとのように呟く。
子供が三人いる。
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子供が三人。
父は家事がまったくできない。
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父は家事には全然、無能である。
布団さえ自分で上げない。
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蒲団さえ自分で上げない。
そして、ただもうばかげた冗談ばかり言っている。
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そうして、ただもう馬鹿げた冗談ばかり言っている。
配給のことも、登録のことも、何も知らない。
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配給だの、登録だの、そんな事は何も知らない。
まるっきり旅館に泊まっているような状態だ。
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全然、宿屋住いでもしているような形。
客が来る。
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来客。
もてなす。
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饗応。
仕事部屋へお弁当を持って出かけて、そのまま一週間も帰ってこないこともある。
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仕事部屋にお弁当を持って出かけて、それっきり一週間も御帰宅にならない事もある。
仕事、仕事、といつも騒いでいるけれど、一日に二、三枚くらいしか書けないようだ。
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仕事、仕事、といつも騒いでいるけれども、一日に二、三枚くらいしかお出来にならないようである。
あとは、酒だ。
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あとは、酒。
飲みすぎると、げっそり痩せて寝込んでしまう。
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飲みすぎると、げっそり痩せてしまって寝込む。
そのうえ、あちこちに若い女の友人などもいる様子だ。
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そのうえ、あちこちに若い女の友達などもある様子だ。
子供……七歳の長女も、今年の春に生まれた次女も、少し風邪をひきやすいけれど、まあ普通だ。
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子供、……七歳の長女も、ことしの春に生れた次女も、少し風邪をひき易いけれども、まずまあ人並。
しかし、四歳の長男は痩せ細っていて、まだ立てない。
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しかし、四歳の長男は、痩せこけていて、まだ立てない。
言葉は、アアとかダアとか言うだけで一語も話せず、また人の言葉を聞き取ることもできない。
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言葉は、アアとかダアとか言うきりで一語も話せず、また人の言葉を聞きわける事も出来ない。
はって歩いていて、大便も小便も知らせない。
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這って歩いていて、ウンコもオシッコも教えない。
それでいて、ごはんはとてもたくさん食べる。
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それでいて、ごはんは実にたくさん食べる。
けれども、いつも痩せて小さく、髪の毛も薄く、少しも育たない。
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けれども、いつも痩せて小さく、髪の毛も薄く、少しも成長しない。
父も母も、この長男のことについて、深く話し合うことを避けている。
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父も母も、この長男について、深く話し合うことを避ける。
知的障害、口がきけない……それを一言でも口に出して、二人で認め合うのはあまりにも悲惨だからだ。
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白痴、唖、……それを一言でも口に出して言って、二人で肯定し合うのは、あまりに悲惨だからである。
母は時々、この子をぎゅっと抱きしめる。
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母は時々、この子を固く抱きしめる。
父はしばしば発作的に、この子を抱いて川に飛び込んで死んでしまいたくなる。
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父はしばしば発作的に、この子を抱いて川に飛び込み死んでしまいたく思う。
「口のきけない次男を斬り殺す。×日正午すぎ×区×町×番地×商、某氏(五三)は自宅の六畳間で次男某(一八)の頭を薪割りで一撃して殺害し、自分はハサミで喉を突いたが死に切れず近くの医院に収容されたが危篤状態。同家では最近、二女某(二二)に養子を迎えたが、次男が口をきけない上に少し頭が弱いので娘可愛さから思い余ったもの」
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「唖の次男を斬殺す。×日正午すぎ×区×町×番地×商、何某(五三)さんは自宅六畳間で次男何某(一八)君の頭を薪割で一撃して殺害、自分はハサミで喉を突いたが死に切れず附近の医院に収容したが危篤、同家では最近二女某(二二)さんに養子を迎えたが、次男が唖の上に少し頭が悪いので娘可愛さから思い余ったもの」
こんな新聞記事もまた、私にやけ酒を飲ませるのだ。
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こんな新聞の記事もまた、私にヤケ酒を飲ませるのである。
ああ、ただ単に発育が遅れているというだけのことであってくれたら!
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ああ、ただ単に、発育がおくれているというだけの事であってくれたら!
この長男がいつか急に成長して、父母の心配を怒って笑い飛ばすようになってくれたら!
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この長男が、いまに急に成長し、父母の心配を憤り嘲笑するようになってくれたら!
夫婦は親戚にも友人にも誰にも打ち明けず、ひそかに心でそれを念じながら、表面は何も気にしていないように長男をからかって笑っている。
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夫婦は親戚にも友人にも誰にも告げず、ひそかに心でそれを念じながら、表面は何も気にしていないみたいに、長男をからかって笑っている。
母も精いっぱい努力して生きているのだろうが、父もまた、必死だった。
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母も精一ぱいの努力で生きているのだろうが、父もまた、一生懸命であった。
もともと、たくさん書ける小説家ではないのだ。
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もともと、あまりたくさん書ける小説家では無いのである。
極度の小心者なのだ。
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極端な小心者なのである。
それが人前に引き出され、あたふたしながら書いているのだ。
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それが公衆の面前に引き出され、へどもどしながら書いているのである。
書くのがつらくて、やけ酒に助けを求める。
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書くのがつらくて、ヤケ酒に救いを求める。
やけ酒というのは、自分の思っていることを主張できない、もどかしさ、腹立たしさで飲む酒のことだ。
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ヤケ酒というのは、自分の思っていることを主張できない、もどっかしさ、いまいましさで飲む酒の事である。
いつでも自分の思っていることをはっきり主張できる人は、やけ酒なんか飲まない。
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いつでも、自分の思っていることをハッキリ主張できるひとは、ヤケ酒なんか飲まない。
(女性に酒飲みが少ないのは、この理由からだ)
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(女に酒飲みの少いのは、この理由からである)
私は議論をして、勝ったためしがない。
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私は議論をして、勝ったためしが無い。
必ず負けるのだ。
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必ず負けるのである。
相手の確信の強さ、自己肯定のすさまじさに圧倒されてしまうのだ。
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相手の確信の強さ、自己肯定のすさまじさに圧倒せられるのである。
そして私は黙る。
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そうして私は沈黙する。
しかし、だんだん考えてみると相手の身勝手に気づき、自分ばかりが悪いわけじゃないとわかってくるのだが、一度言い負かされたくせにまたしつこく戦い直すのも陰険だし、それに私は言い争いが殴り合いと同じくらいいつまでも不快な憎しみとして残るので、怒りに震えながらも笑い、黙り、それからいろいろ考え、ついやけ酒ということになるのだ。
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しかし、だんだん考えてみると、相手の身勝手に気がつき、ただこっちばかりが悪いのではないのが確信せられて来るのだが、いちど言い負けたくせに、またしつこく戦闘開始するのも陰惨だし、それに私には言い争いは殴り合いと同じくらいにいつまでも不快な憎しみとして残るので、怒りにふるえながらも笑い、沈黙し、それから、いろいろさまざま考え、ついヤケ酒という事になるのである。
はっきり言おう。
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はっきり言おう。
くどくどとあちこち遠回りに書いてきたが、実はこの小説、夫婦喧嘩の小説なのだ。
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くどくどと、あちこち持ってまわった書き方をしたが、実はこの小説、夫婦喧嘩の小説なのである。
「涙の谷」
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「涙の谷」
それが導火線だった。
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それが導火線であった。
この夫婦は既に述べたとおり、乱暴なことはもちろん、口汚くののしり合ったことさえないとてもおとなしい二人なのだが、しかしそれだけまた、一触即発の危険におびえているところもあった。
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この夫婦は既に述べたとおり、手荒なことはもちろん、口汚く罵り合った事さえないすこぶるおとなしい一組ではあるが、しかし、それだけまた一触即発の危険におののいているところもあった。
両方が無言で相手の悪さの証拠固めをしているような危険、一枚の札をちらと見ては伏せ、また一枚ちらと見ては伏せ、いつか出し抜けに「さあできました」と札をそろえて目の前に広げられるような危険、それが夫婦を互いに遠慮深くさせていたと言えなくもなかった。
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両方が無言で、相手の悪さの証拠固めをしているような危険、一枚の札をちらと見ては伏せ、また一枚ちらと見ては伏せ、いつか、出し抜けに、さあ出来ましたと札をそろえて眼前にひろげられるような危険、それが夫婦を互いに遠慮深くさせていたと言って言えないところが無いでも無かった。
妻のほうはともかく、夫のほうは、叩けば叩くほどいくらでも埃の出そうな男なのだ。
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妻のほうはとにかく、夫のほうは、たたけばたたくほど、いくらでもホコリの出そうな男なのである。
「涙の谷」
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「涙の谷」
そう言われて、夫はひがんだ。
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そう言われて、夫は、ひがんだ。
しかし、言い争いは好まない。
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しかし、言い争いは好まない。
黙った。
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沈黙した。
お前はおれに、多少あてつける気持でそう言ったのだろうが、しかし泣いているのはお前だけじゃない。
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お前はおれに、いくぶんあてつける気持で、そう言ったのだろうが、しかし、泣いているのはお前だけでない。
おれだって、お前に負けず、子供のことは考えている。
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おれだって、お前に負けず、子供の事は考えている。
自分の家庭は大事だと思っている。
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自分の家庭は大事だと思っている。
子供が夜中に変な咳を一つしただけで、きっと目が覚めて、たまらない気持になる。
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子供が夜中に、へんな咳一つしても、きっと眼がさめて、たまらない気持になる。
もう少しましな家に引っ越して、お前や子供たちを喜ばせてあげたくてたまらないが、しかしおれにはどうしてもそこまで手が回らないのだ。
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もう少し、ましな家に引越して、お前や子供たちをよろこばせてあげたくてならぬが、しかし、おれには、どうしてもそこまで手が廻らないのだ。
これでもう、精いっぱいなのだ。
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これでもう、精一ぱいなのだ。
おれだって、凶暴な怪物じゃない。
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おれだって、凶暴な魔物ではない。
妻子を見捨てておいて平然としているような「度胸」
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妻子を見殺しにして平然、というような「度胸」
は持っていないのだ。
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を持ってはいないのだ。
配給や登録のことだって、知らないんじゃない、知るひまがないのだ……
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配給や登録の事だって、知らないのではない、知るひまが無いのだ。……
父は心の中でそうつぶやいた。しかしそれを口に出す自信もなく、また言い出して母から何か切り返されたらぐうの音も出ないような気もして、
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父は、そう心の中で呟き、しかし、それを言い出す自信も無く、また、言い出して母から何か切りかえされたら、ぐうの音も出ないような気もして、
「誰か、人を雇いなさい」
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「誰か、ひとを雇いなさい」
と、ひとりごとのように、かろうじて主張してみたわけなのだ。
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と、ひとりごとみたいに、わずかに主張してみた次第なのだ。
母も、もともと口数が少ないほうだ。
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母も、いったい、無口なほうである。
しかし、言うことにいつも冷たい自信を持っていた。
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しかし、言うことに、いつも、つめたい自信を持っていた。
(この母に限らず、どこの女性もたいていそんなものだが)
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(この母に限らず、どこの女も、たいていそんなものであるが)
「でも、なかなか来てくれる人もいませんから」
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「でも、なかなか、来てくれるひともありませんから」
「探せば、きっと見つかりますよ。来てくれる人がいないんじゃなくて、いてくれる人がいないんじゃないかな?」
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「捜せば、きっと見つかりますよ。来てくれるひとが無いんじゃ無い、いてくれるひとが無いんじゃないかな?」
「私が、人を使うのが下手だとおっしゃるのですか?」
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「私が、ひとを使うのが下手だとおっしゃるのですか?」
「そんな……」
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「そんな、……」
父はまた黙った。
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父はまた黙した。
じつは、そう思っていたのだ。
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じつは、そう思っていたのだ。
しかし、黙った。
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しかし、黙した。
ああ、誰かひとり、雇ってくれたらいい。
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ああ、誰かひとり、雇ってくれたらいい。
母が末の子をおんぶして用事に外へ出かけると、父は残りの二人の子の面倒を見なければならない。
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母が末の子を背負って、用足しに外に出かけると、父はあとの二人の子の世話を見なければならぬ。
そして、客が毎日決まって十人くらいずつ来る。
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そうして、来客が毎日、きまって十人くらいずつある。
「仕事部屋のほうへ出かけたいんだけど」
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「仕事部屋のほうへ、出かけたいんだけど」
「これからですか?」
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「これからですか?」
「そう。どうしても今夜のうちに書き上げなければならない仕事があるんだ」
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「そう。どうしても、今夜のうちに書き上げなければならない仕事があるんだ」
それは嘘ではなかった。
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それは、嘘でなかった。
しかし、家の中の憂鬱から逃げ出したい気持もあったのだ。
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しかし、家の中の憂鬱から、のがれたい気もあったのである。
「今夜は私、妹のところへ行って来たいと思っているのですけど」
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「今夜は、私、妹のところへ行って来たいと思っているのですけど」
それも、私は知っていた。
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それも、私は知っていた。
妹は重体なのだ。
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妹は重態なのだ。
しかし、女房がお見舞いに行けば、私は子供の子守りをしていなければならない。
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しかし、女房が見舞いに行けば、私は子供のお守りをしていなければならぬ。
「だから、人を雇って……」
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「だから、ひとを雇って、……」
言いかけて、私はやめた。
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言いかけて、私は、よした。
女房の身内のことに少しでも触れると、ひどく二人の気持がこじれてしまう。
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女房の身内のひとの事に少しでも、ふれると、ひどく二人の気持がややこしくなる。
生きるということは、たいへんなことだ。
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生きるという事は、たいへんな事だ。
あちこちから鎖がからまっていて、少しでも動くと血が噴き出す。
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あちこちから鎖がからまっていて、少しでも動くと、血が噴き出す。
私は黙って立って、六畳間の机の引き出しから原稿料が入っている封筒を取り出し、たもとに突っ込んで、それから原稿用紙と辞典を黒い風呂敷に包み、まるで体がないみたいに、ふわりと外に出る。
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私は黙って立って、六畳間の机の引出しから稿料のはいっている封筒を取り出し、袂につっ込んで、それから原稿用紙と辞典を黒い風呂敷に包み、物体でないみたいに、ふわりと外に出る。
もう仕事どころではない。
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もう、仕事どころではない。
自殺のことばかり考えている。
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自殺の事ばかり考えている。
そして、酒を飲む場所へまっすぐに行く。
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そうして、酒を飲む場所へまっすぐに行く。
「いらっしゃい」
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「いらっしゃい」
「飲もう。今日はまた、やけにきれいな縞模様を……」
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「飲もう。きょうはまた、ばかに綺麗な縞を、……」
「悪くないでしょう? あなたの好きな縞だと思っていたの」
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「わるくないでしょう? あなたの好く縞だと思っていたの」
「今日は夫婦喧嘩でね、陰にこもってやりきれないんだ。飲もう。今夜は泊まるぞ。絶対泊まる」
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「きょうは、夫婦喧嘩でね、陰にこもってやりきれねえんだ。飲もう。今夜は泊るぜ。だんぜん泊る」
子供より親が大事だ、と思いたい。
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子供より親が大事、と思いたい。
子供よりも、その親のほうが弱いのだ。
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子供よりも、その親のほうが弱いのだ。
桜桃が出た。
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桜桃が出た。
私の家では、子供たちにぜいたくなものを食べさせない。
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私の家では、子供たちに、ぜいたくなものを食べさせない。
子供たちは、桜桃など見たこともないかもしれない。
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子供たちは、桜桃など、見た事も無いかもしれない。
食べさせたら、喜ぶだろう。
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食べさせたら、よろこぶだろう。
父が持って帰ったら、喜ぶだろう。
原文を見る
父が持って帰ったら、よろこぶだろう。
つるを糸でつないで首にかけると、桜桃はサンゴの首飾りのように見えるだろう。
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蔓を糸でつないで、首にかけると、桜桃は、珊瑚の首飾りのように見えるだろう。
しかし父は、大皿に盛られた桜桃を、極めてまずそうに食べては種を吐き、食べては種を吐き、食べては種を吐き、そして心の中で虚勢みたいにつぶやく言葉は、子供よりも親が大事。
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しかし、父は、大皿に盛られた桜桃を、極めてまずそうに食べては種を吐き、食べては種を吐き、食べては種を吐き、そうして心の中で虚勢みたいに呟く言葉は、子供よりも親が大事。