ごん狐 小学生向け
新美南吉(にいみなんきち)・1996年
AI生成この訳はAI(claude-sonnet-4-6)が原文から生成したものです(生成日: 2026-07-23)
一
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一
これは、私が小さいときに、村の茂平(もへい)というおじいさんから聞いたお話です。
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これは、私が小さいときに、村の茂平というおじいさんからきいたお話です。
むかし、私たちの村の近くにある中山(なかやま)というところに、小さなお城があって、中山さまというお殿さまが住んでおられたそうです。
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むかしは、私たちの村のちかくの、中山というところに小さなお城があって、中山さまというおとのさまが、おられたそうです。
その中山から少し離れた山の中に、「ごん狐(きつね)」
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その中山から、少しはなれた山の中に、「ごん狐」
という狐がいました。
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という狐がいました。
ごんは一人ぼっちの小さな狐で、シダ植物がたくさん生い茂る森の中に穴を掘って住んでいました。
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ごんは、一人ぼっちの小狐で、しだの一ぱいしげった森の中に穴をほって住んでいました。
そして、夜でも昼でも、近くの村へ出てきては、いたずらばかりしていました。
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そして、夜でも昼でも、あたりの村へ出てきて、いたずらばかりしました。
畑へ入って芋を掘り散らしたり、菜種(なたね)の茎の乾かしてあるものに火をつけたり、農家の裏手につるしてあるとうがらしをむしり取っていったり、いろんなことをしました。
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はたけへ入って芋をほりちらしたり、菜種がらの、ほしてあるのへ火をつけたり、百姓家の裏手につるしてあるとんがらしをむしりとって、いったり、いろんなことをしました。
ある秋のことでした。
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或秋のことでした。
二、三日雨が降り続いたその間、ごんは外へも出られなくて、穴の中にしゃがんでいました。
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二、三日雨がふりつづいたその間、ごんは、外へも出られなくて穴の中にしゃがんでいました。
雨があがると、ごんはほっとして穴からはい出ました。
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雨があがると、ごんは、ほっとして穴からはい出ました。
空はからりと晴れていて、モズの鳴き声がキンキンと響いていました。
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空はからっと晴れていて、百舌鳥の声がきんきん、ひびいていました。
ごんは、村の小川の土手まで出てきました。
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ごんは、村の小川の堤まで出て来ました。
あたりのススキの穂には、まだ雨のしずくが光っていました。
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あたりの、すすきの穂には、まだ雨のしずくが光っていました。
川は、いつもは水が少ないのですが、三日もの雨で、水がどっと増えていました。
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川は、いつもは水が少いのですが、三日もの雨で、水が、どっとましていました。
ふだんは水につかることのない、川辺のススキや萩(はぎ)の株が、黄色く濁った水の中で横倒しになって、もみくちゃにされています。
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ただのときは水につかることのない、川べりのすすきや、萩の株が、黄いろくにごった水に横だおしになって、もまれています。
ごんは川下の方へと、ぬかるんだ道を歩いていきました。
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ごんは川下の方へと、ぬかるみみちを歩いていきました。
ふと見ると、川の中に人がいて、何かやっています。
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ふと見ると、川の中に人がいて、何かやっています。
ごんは、見つからないように、そうっと草の深いところへ近寄って、そこからじっとのぞいてみました。
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ごんは、見つからないように、そうっと草の深いところへ歩きよって、そこからじっとのぞいてみました。
「兵十(ひょうじゅう)だな」
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「兵十だな」
と、ごんは思いました。
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と、ごんは思いました。
兵十は、ボロボロの黒い着物をまくし上げて、腰のところまで水につかりながら、魚をとる「はりきり網(あみ)」という網を揺すっていました。
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兵十はぼろぼろの黒いきものをまくし上げて、腰のところまで水にひたりながら、魚をとる、はりきりという、網をゆすぶっていました。
頭に巻いたはちまきをした顔の横っちょに、丸い萩の葉が一枚、大きなほくろみたいにへばりついていました。
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はちまきをした顔の横っちょうに、まるい萩の葉が一まい、大きな黒子みたいにへばりついていました。
しばらくすると、兵十は、はりきり網の一番うしろの、袋のようになったところを、水の中から持ち上げました。
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しばらくすると、兵十は、はりきり網の一ばんうしろの、袋のようになったところを、水の中からもちあげました。
その中には、芝の根や草の葉、腐った木切れなどがごちゃごちゃ入っていましたが、ところどころ白いものがキラキラ光っています。
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その中には、芝の根や、草の葉や、くさった木ぎれなどが、ごちゃごちゃはいっていましたが、でもところどころ、白いものがきらきら光っています。
それは、太いうなぎのお腹や、大きなキスのお腹でした。
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それは、ふというなぎの腹や、大きなきすの腹でした。
兵十は、魚入れかご(びく)の中へ、そのうなぎやキスをゴミと一緒にほうり込みました。
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兵十は、びくの中へ、そのうなぎやきすを、ごみと一しょにぶちこみました。
そして、また袋の口をしばって、水の中へ入れました。
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そして、また、袋の口をしばって、水の中へ入れました。
兵十はそれから、びくを持って川から上がり、びくを土手に置いておいて、何かをさがしに川上の方へかけていきました。
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兵十はそれから、びくをもって川から上りびくを土手においといて、何をさがしにか、川上の方へかけていきました。
兵十がいなくなると、ごんはぴょいと草の中から飛び出して、びくのそばへかけつけました。
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兵十がいなくなると、ごんは、ぴょいと草の中からとび出して、びくのそばへかけつけました。
ちょっとだけ、いたずらがしたくなったのです。
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ちょいと、いたずらがしたくなったのです。
ごんはびくの中の魚をつかみ出しては、はりきり網のかかっているところより下流の川の中をめがけて、ぽんぽん投げ込みました。
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ごんはびくの中の魚をつかみ出しては、はりきり網のかかっているところより下手の川の中を目がけて、ぽんぽんなげこみました。
どの魚も「ドボン」
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どの魚も、「とぼん」
と音を立てながら、濁った水の中へもぐりこんでいきました。
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と音を立てながら、にごった水の中へもぐりこみました。
最後に、太いうなぎをつかもうとしましたが、何しろぬるぬると滑り抜けるので、手ではつかめません。
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一ばんしまいに、太いうなぎをつかみにかかりましたが、何しろぬるぬるとすべりぬけるので、手ではつかめません。
ごんはじれったくなって、頭をびくの中に突っ込んで、うなぎの頭を口にくわえました。
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ごんはじれったくなって、頭をびくの中につッこんで、うなぎの頭を口にくわえました。
うなぎは、キュッと鳴いてごんの首に巻きつきました。
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うなぎは、キュッと言ってごんの首へまきつきました。
そのとたんに兵十が向こうから、
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そのとたんに兵十が、向うから、
「うわあ、ぬすと狐め!」
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「うわアぬすと狐め」
とどなりました。
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と、どなりたてました。
ごんはびっくりして飛び上がりました。
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ごんは、びっくりしてとびあがりました。
うなぎを振り捨てて逃げようとしましたが、うなぎはごんの首に巻きついたまま離れません。
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うなぎをふりすててにげようとしましたが、うなぎは、ごんの首にまきついたままはなれません。
ごんはそのまま横っとびに飛び出して、一生けんめいに逃げていきました。
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ごんはそのまま横っとびにとび出して一しょうけんめいに、にげていきました。
穴の近くのハンノキの木の下で振り返って見ましたが、兵十は追いかけては来ませんでした。
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ほら穴の近くの、はんの木の下でふりかえって見ましたが、兵十は追っかけては来ませんでした。
ごんはほっとして、うなぎの頭を噛み砕いて、やっとはずして、穴の外の草の葉の上に置いておきました。
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ごんは、ほっとして、うなぎの頭をかみくだき、やっとはずして穴のそとの、草の葉の上にのせておきました。
二
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二
十日ほどたって、ごんが弥助(やすけ)というお百姓の家の裏を通りかかりますと、そこのイチジクの木のかげで、弥助の奥さんが歯を黒く染める「おはぐろ」をつけていました。
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十日ほどたって、ごんが、弥助というお百姓の家の裏を通りかかりますと、そこの、いちじくの木のかげで、弥助の家内が、おはぐろをつけていました。
鍛冶屋(かじや)の新兵衛(しんべえ)の家の裏を通ると、新兵衛の奥さんが髪をくしでとかしていました。
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鍛冶屋の新兵衛の家のうらを通ると、新兵衛の家内が髪をすいていました。
ごんは、
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ごんは、
「ふふん、村に何かあるんだな」
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「ふふん、村に何かあるんだな」
と、思いました。
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と、思いました。
「なんだろう、秋祭かな。祭なら、太鼓や笛の音がしそうなものだ。それに第一、お宮にのぼりが立つはずだが」
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「何だろう、秋祭かな。祭なら、太鼓や笛の音がしそうなものだ。それに第一、お宮にのぼりが立つはずだが」
こんなことを考えながらやってきますと、いつの間にか、表に赤い井戸のある兵十の家の前へ来ていました。
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こんなことを考えながらやって来ますと、いつの間にか、表に赤い井戸のある、兵十の家の前へ来ました。
その小さなボロボロの家の中には、大勢の人が集まっていました。
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その小さな、こわれかけた家の中には、大勢の人があつまっていました。
よそいきの着物を着て、腰に手ぬぐいをさげた女たちが、表のかまどで火をたいています。
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よそいきの着物を着て、腰に手拭をさげたりした女たちが、表のかまどで火をたいています。
大きな鍋の中では、何かぐつぐつと煮えていました。
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大きな鍋の中では、何かぐずぐず煮えていました。
「ああ、お葬式だ」
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「ああ、葬式だ」
と、ごんは思いました。
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と、ごんは思いました。
「兵十の家の誰が死んだんだろう」
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「兵十の家のだれが死んだんだろう」
お昼をすぎると、ごんは村のお墓へ行って、六地蔵(ろくじぞう)さんのかげにかくれていました。
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お午がすぎると、ごんは、村の墓地へ行って、六地蔵さんのかげにかくれていました。
いいお天気で、遠く向こうには、お城の屋根の瓦(かわら)が光っています。
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いいお天気で、遠く向うには、お城の屋根瓦が光っています。
お墓には、彼岸花(ひがんばな)が赤い布きれのように咲き続いていました。
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墓地には、ひがん花が、赤い布のようにさきつづいていました。
すると、村の方から、カーン、カーンと鐘の音が聞こえてきました。
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と、村の方から、カーン、カーン、と、鐘が鳴って来ました。
お葬式が始まる合図です。
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葬式の出る合図です。
やがて、白い着物を着た葬列の人たちがやってくるのが、チラチラ見え始めました。
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やがて、白い着物を着た葬列のものたちがやって来るのがちらちら見えはじめました。
話し声も近くなりました。
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話声も近くなりました。
葬列はお墓の中へ入ってきました。
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葬列は墓地へはいって来ました。
人々が通ったあとには、彼岸花が踏み倒されていました。
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人々が通ったあとには、ひがん花が、ふみおられていました。
ごんは背伸びをして見ました。
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ごんはのびあがって見ました。
兵十が、白い礼服(かみしも)をつけて、位牌(いはい)を手に持って捧げています。
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兵十が、白いかみしもをつけて、位牌をささげています。
いつもは赤いサツマ芋みたいに元気のいい顔が、今日は何だかしょんぼりしていました。
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いつもは、赤いさつま芋みたいな元気のいい顔が、きょうは何だかしおれていました。
「ははん、死んだのは兵十のお母さんだ」
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「ははん、死んだのは兵十のおっ母だ」
ごんはそう思いながら、頭をひっこめました。
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ごんはそう思いながら、頭をひっこめました。
その晩、ごんは穴の中で考えました。
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その晩、ごんは、穴の中で考えました。
「兵十のお母さんは、寝込んでいて、うなぎが食べたいと言ったにちがいない。それで兵十がはりきり網を持ち出したんだ。ところが、ぼくがいたずらをして、うなぎを取ってきてしまった。だから兵十は、お母さんにうなぎを食べさせることができなかった。そのままお母さんは死んでしまったにちがいない。ああ、うなぎが食べたい、うなぎが食べたいと思いながら、死んでいったんだろう。ちっ、あんないたずらをしなければよかった。」
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「兵十のおっ母は、床についていて、うなぎが食べたいと言ったにちがいない。それで兵十がはりきり網をもち出したんだ。ところが、わしがいたずらをして、うなぎをとって来てしまった。だから兵十は、おっ母にうなぎを食べさせることができなかった。そのままおっ母は、死んじゃったにちがいない。ああ、うなぎが食べたい、うなぎが食べたいとおもいながら、死んだんだろう。ちょッ、あんないたずらをしなけりゃよかった。」
三
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三
兵十が、赤い井戸のところで、麦を洗っていました。
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兵十が、赤い井戸のところで、麦をといでいました。
兵十はこれまで、お母さんと二人きりで貧しい暮らしをしていたので、お母さんが死んでしまっては、もう一人ぼっちでした。
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兵十は今まで、おっ母と二人きりで、貧しいくらしをしていたもので、おっ母が死んでしまっては、もう一人ぼっちでした。
「おれと同じ一人ぼっちの兵十か」
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「おれと同じ一人ぼっちの兵十か」
こちらの物置の後ろから見ていたごんは、そう思いました。
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こちらの物置の後から見ていたごんは、そう思いました。
ごんは物置のそばを離れて向こうへ行きかけますと、どこかで、いわしを売る声がします。
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ごんは物置のそばをはなれて、向うへいきかけますと、どこかで、いわしを売る声がします。
「いわしのやすうりだよー。生きのいいいわしだよー」
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「いわしのやすうりだアい。いきのいいいわしだアい」
ごんは、その元気のいい声がする方へ走っていきました。
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ごんは、その、いせいのいい声のする方へ走っていきました。
すると、弥助のおかみさんが、裏の戸口から、
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と、弥助のおかみさんが、裏戸口から、
「いわしをおくれ。」
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「いわしをおくれ。」
と言いました。
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と言いました。
いわし売りは、いわしのかごを積んだ車を道ばたに置いて、ぴかぴか光るいわしを両手でつかんで、弥助の家の中へ持って入りました。
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いわし売は、いわしのかごをつんだ車を、道ばたにおいて、ぴかぴか光るいわしを両手でつかんで、弥助の家の中へもってはいりました。
ごんはその隙に、かごの中から五、六匹のいわしをつかみ出して、もと来た方へ走り出しました。
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ごんはそのすきまに、かごの中から、五、六ぴきのいわしをつかみ出して、もと来た方へかけだしました。
そして、兵十の家の裏口から、家の中へいわしを投げ込んで、自分の穴へ向かって走って戻りました。
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そして、兵十の家の裏口から、家の中へいわしを投げこんで、穴へ向ってかけもどりました。
途中の坂の上で振り返って見ますと、兵十がまだ井戸のところで麦を洗っているのが、小さく見えました。
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途中の坂の上でふりかえって見ますと、兵十がまだ、井戸のところで麦をといでいるのが小さく見えました。
ごんは、うなぎをぬすんでしまったつぐないに、まず一つ、いいことをしたと思いました。
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ごんは、うなぎのつぐないに、まず一つ、いいことをしたと思いました。
次の日には、ごんは山で栗をどっさり拾って、それをかかえて兵十の家へ行きました。
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つぎの日には、ごんは山で栗をどっさりひろって、それをかかえて、兵十の家へいきました。
裏口からのぞいてみますと、兵十は昼ごはんを食べかけて、茶わんを持ったまま、ぼんやりと考え込んでいました。
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裏口からのぞいて見ますと、兵十は、午飯をたべかけて、茶椀をもったまま、ぼんやりと考えこんでいました。
おかしなことに、兵十のほっぺたに、かすり傷がついています。
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へんなことには兵十の頬ぺたに、かすり傷がついています。
どうしたんだろうと、ごんが思っていますと、兵十がひとりごとを言いました。
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どうしたんだろうと、ごんが思っていますと、兵十がひとりごとをいいました。
「いったい誰が、いわしなんかをおれの家へほうり込んでいったんだろう。おかげでおれは、ぬすびとと思われて、いわし屋のやつにひどい目にあわされた」
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「一たいだれが、いわしなんかをおれの家へほうりこんでいったんだろう。おかげでおれは、盗人と思われて、いわし屋のやつに、ひどい目にあわされた」
と、ぶつぶつ言っています。
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と、ぶつぶつ言っています。
ごんは、しまったと思いました。
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ごんは、これはしまったと思いました。
かわいそうに兵十は、いわし屋にぶんなぐられて、あんな傷までつけられたのか。
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かわいそうに兵十は、いわし屋にぶんなぐられて、あんな傷までつけられたのか。
ごんはこう思いながら、そっと物置の方へまわって、その入口に栗を置いて帰りました。
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ごんはこうおもいながら、そっと物置の方へまわってその入口に、栗をおいてかえりました。
次の日も、そのまた次の日も、ごんは栗を拾っては、兵十の家へ持ってきてやりました。
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つぎの日も、そのつぎの日もごんは、栗をひろっては、兵十の家へもって来てやりました。
そのまた次の日には、栗ばかりでなく、まつたけも二、三本持っていきました。
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そのつぎの日には、栗ばかりでなく、まつたけも二、三ぼんもっていきました。
四
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四
月のきれいな夜でした。
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月のいい晩でした。
ごんは、ぶらぶら遊びに出かけました。
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ごんは、ぶらぶらあそびに出かけました。
中山さまのお城の下を通って少し行くと、細い道の向こうから、だれか来るようです。
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中山さまのお城の下を通ってすこしいくと、細い道の向うから、だれか来るようです。
話し声が聞こえます。
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話声が聞えます。
チンチロリン、チンチロリンと松虫(まつむし)が鳴いています。
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チンチロリン、チンチロリンと松虫が鳴いています。
ごんは、道の片側にかくれて、じっとしていました。
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ごんは、道の片がわにかくれて、じっとしていました。
話し声はだんだん近くなりました。
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話声はだんだん近くなりました。
それは、兵十と加助(かすけ)というお百姓でした。
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それは、兵十と加助というお百姓でした。
「そうそう、なあ加助」
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「そうそう、なあ加助」
と、兵十が言いました。
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と、兵十がいいました。
「ああん?」
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「ああん?」
「おれは、このごろ、とても不思議なことがあるんだ」
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「おれあ、このごろ、とてもふしぎなことがあるんだ」
「何が?」
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「何が?」
「お母さんが死んでからは、誰だか知らないが、おれに栗やまつたけなんかを、毎日毎日くれるんだよ」
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「おっ母が死んでからは、だれだか知らんが、おれに栗やまつたけなんかを、まいにちまいにちくれるんだよ」
「ふうん、誰が?」
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「ふうん、だれが?」
「それがわからないんだよ。おれの知らないうちに、置いていくんだ」
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「それがわからんのだよ。おれの知らんうちに、おいていくんだ」
ごんは、二人のあとをつけていきました。
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ごんは、ふたりのあとをつけていきました。
「ほんとかい?」
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「ほんとかい?」
「ほんとだよ。うそと思うなら、あした見に来いよ。その栗を見せてやるよ」
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「ほんとだとも。うそと思うなら、あした見に来いよ。その栗を見せてやるよ」
「へえ、変なこともあるもんだなあ」
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「へえ、へんなこともあるもんだなア」
それっきり、二人は黙って歩いていきました。
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それなり、二人はだまって歩いていきました。
加助がひょいと後ろを見ました。
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加助がひょいと、後を見ました。
ごんはびくっとして、小さくなって立ち止まりました。
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ごんはびくっとして、小さくなってたちどまりました。
加助は、ごんには気がつかないで、そのままさっさと歩いていきました。
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加助は、ごんには気がつかないで、そのままさっさとあるきました。
吉兵衛(きちべえ)というお百姓の家まで来ると、二人はそこへ入っていきました。
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吉兵衛というお百姓の家まで来ると、二人はそこへはいっていきました。
ポンポンポンポンと木魚(もくぎょ)の音がしています。
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ポンポンポンポンと木魚の音がしています。
窓の障子(しょうじ)に明かりが差していて、大きな坊さんの頭の影が映って動いていました。
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窓の障子にあかりがさしていて、大きな坊主頭がうつって動いていました。
ごんは、
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ごんは、
「お念仏があるんだな」
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「おねんぶつがあるんだな」
と思いながら、井戸のそばにしゃがんでいました。
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と思いながら井戸のそばにしゃがんでいました。
しばらくすると、また三人ほど、人が連れだって吉兵衛の家へ入っていきました。
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しばらくすると、また三人ほど、人がつれだって吉兵衛の家へはいっていきました。
お経を読む声が聞こえてきました。
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お経を読む声がきこえて来ました。
五
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五
ごんは、お念仏が終わるまで、井戸のそばにしゃがんでいました。
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ごんは、おねんぶつがすむまで、井戸のそばにしゃがんでいました。
兵十と加助は、また一緒に帰っていきます。
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兵十と加助は、また一しょにかえっていきます。
ごんは、二人の話を聞こうと思って、ついていきました。
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ごんは、二人の話をきこうと思って、ついていきました。
兵十の影をふみながら歩いていきました。
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兵十の影法師をふみふみいきました。
お城の前まで来たとき、加助が言い出しました。
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お城の前まで来たとき、加助が言い出しました。
「さっきの話は、きっと、そりゃあ、神さまのしわざだぞ」
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「さっきの話は、きっと、そりゃあ、神さまのしわざだぞ」
「えっ?」
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「えっ?」
と、兵十はびっくりして、加助の顔を見ました。
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と、兵十はびっくりして、加助の顔を見ました。
「おれはさっきからずっと考えていたんだが、どう考えても、それは人間じゃない、神さまだ。神さまが、お前がたった一人になったのをかわいそうに思って、いろんなものを恵んでくださるんだよ」
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「おれは、あれからずっと考えていたが、どうも、そりゃ、人間じゃない、神さまだ、神さまが、お前がたった一人になったのをあわれに思わっしゃって、いろんなものをめぐんで下さるんだよ」
「そうかなあ」
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「そうかなあ」
「そうだとも。だから、毎日神さまにお礼を言うといいよ」
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「そうだとも。だから、まいにち神さまにお礼を言うがいいよ」
「うん」
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「うん」
ごんは、へえ、こいつはつまらないなと思いました。
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ごんは、へえ、こいつはつまらないなと思いました。
おれが、栗やまつたけを持っていってやっているのに、そのおれにはお礼を言わないで、神さまにお礼を言うんじゃあ、おれは、割に合わないなあ。
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おれが、栗や松たけを持っていってやるのに、そのおれにはお礼をいわないで、神さまにお礼をいうんじゃア、おれは、引き合わないなあ。
六
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六
その次の日もごんは、栗を持って兵十の家へ出かけました。
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そのあくる日もごんは、栗をもって、兵十の家へ出かけました。
兵十は物置でなわをなっていました。
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兵十は物置で縄をなっていました。
それでごんは家の裏口から、こっそり中へ入りました。
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それでごんは家の裏口から、こっそり中へはいりました。
そのとき兵十は、ふと顔を上げました。
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そのとき兵十は、ふと顔をあげました。
すると狐が家の中へ入ったではありませんか。
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と狐が家の中へはいったではありませんか。
こないだうなぎをぬすみやがったあのごん狐めが、またいたずらをしに来たな。
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こないだうなぎをぬすみやがったあのごん狐めが、またいたずらをしに来たな。
「ようし。」
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「ようし。」
兵十は立ち上がって、納屋(なや)にかけてある火縄銃(ひなわじゅう)を取って、火薬を詰めました。
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兵十は立ちあがって、納屋にかけてある火縄銃をとって、火薬をつめました。
そして足音を忍ばせて近寄って、今まさに戸口を出ようとするごんを、ドンと撃ちました。
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そして足音をしのばせてちかよって、今戸口を出ようとするごんを、ドンと、うちました。
ごんは、バタリと倒れました。
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ごんは、ばたりとたおれました。
兵十はかけ寄ってきました。
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兵十はかけよって来ました。
家の中を見ると、土間(どま)に栗がまとめて置いてあるのが目につきました。
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家の中を見ると、土間に栗が、かためておいてあるのが目につきました。
「おや」
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「おや」
と兵十はびっくりして、ごんに目を落としました。
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と兵十は、びっくりしてごんに目を落しました。
「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは」
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「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは」
ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。
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ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。
兵十は火縄銃をバタリと取り落としました。
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兵十は火縄銃をばたりと、とり落しました。
青い煙が、まだ銃口(つつぐち)から細く出ていました。
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青い煙が、まだ筒口から細く出ていました。