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手袋を買いに 現代語訳

新美南吉にいみなんきち)・1996

AI生成この訳はAI(claude-sonnet-4-6)が原文から生成したものです(生成日: 2026-07-23

寒い冬が北の方からやってきて、きつねの親子が暮らしている森にも訪れました。

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寒い冬が北方から、きつねの親子のんでいる森へもやって来ました。

ある朝、子きつねが巣穴から出ようとしたとき、

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或朝あるあさ洞穴ほらあなから子供の狐が出ようとしましたが、

「あっ」

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「あっ」

と叫んで目を押さえながら、お母さんきつねのところへころがるように駆け戻ってきました。

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と叫んでおさえながら母さん狐のところへころげて来ました。

「お母ちゃん、目に何か刺さった。抜いてちょうだい、早く早く」

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「母ちゃん、眼に何か刺さった、ぬいて頂戴ちょうだい早く早く」

と言いました。

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と言いました。

お母さんきつねはびっくりして、あわてながら、目を押さえている子どもの手をおそるおそる取りのけてみましたが、何も刺さってはいませんでした。

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母さん狐がびっくりして、あわてふためきながら、眼を抑えている子供の手を恐る恐るとりのけて見ましたが、何も刺さってはいませんでした。

お母さんきつねが巣穴の入り口から外に出て、初めてわけがわかりました。

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母さん狐は洞穴の入口から外へ出て始めてわけがわかりました。

昨夜のうちに、真っ白な雪がたっぷり降っていたのです。

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昨夜のうちに、真白な雪がどっさり降ったのです。

その雪の上からお日さまがキラキラと照っていたので、雪は目がくらむほど光を反射していたのです。

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その雪の上からおさまがキラキラとてらしていたので、雪はまぶしいほど反射していたのです。

雪を知らなかった子きつねは、あまりにも強い反射を受けたので、目に何かが刺さったと思ったのでした。

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雪を知らなかった子供の狐は、あまり強い反射をうけたので、眼に何か刺さったと思ったのでした。

子きつねは遊びに出かけました。

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子供の狐は遊びに行きました。

真綿みたいにやわらかい雪の上を駆け回ると、雪の粉がしぶきのように飛び散って、小さな虹がすっと映るのでした。

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真綿まわたのようにやわらかい雪の上をまわると、雪のが、しぶきのように飛び散って小さいにじがすっと映るのでした。

すると突然、後ろで、

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すると突然、うしろで、

「どたどた、ざーっ」

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「どたどた、ざーっ」

と、すごい音がして、パン粉みたいな粉雪がふわーっと子きつねの上に降りかかってきました。

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物凄ものすごい音がして、パン粉のような粉雪こなゆきが、ふわーっと子狐におっかぶさって来ました。

子きつねはびっくりして、雪の中を転がるようにして十メートルほど先へ逃げました。

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子狐はびっくりして、雪の中にころがるようにして十メートルも向こうへ逃げました。

何だろうと思って振り返ってみましたが、何もいませんでした。

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何だろうと思ってふり返って見ましたが何もいませんでした。

もみの枝から雪がなだれ落ちたのでした。

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それはもみの枝から雪がなだれ落ちたのでした。

まだ枝と枝のあいだから、白い絹糸のように雪がこぼれていました。

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まだ枝と枝の間から白い絹糸のように雪がこぼれていました。

しばらくして巣穴に帰ってきた子きつねは、

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間もなく洞穴へ帰って来た子狐は、

「お母ちゃん、お手々が冷たい、お手々がちんちんする」

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「お母ちゃん、お手々が冷たい、お手々がちんちんする」

と言って、濡れてぼたん色になった両手をお母さんきつねの前に差し出しました。

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と言って、れて牡丹色ぼたんいろになった両手を母さん狐の前にさしだしました。

お母さんきつねは、その手にはーっと息を吹きかけて、温かい自分の手でそっと包んでやりながら、

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母さん狐は、その手に、は――っと息をふっかけて、ぬくとい母さんの手でやんわり包んでやりながら、

「もうすぐ温かくなるよ。雪をさわると、すぐ温かくなるもんだよ」

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「もうすぐあたたかくなるよ、雪をさわると、すぐ暖くなるもんだよ」

と言いましたが、かわいい坊やの手にしもやけができてはかわいそうだから、夜になったら町まで行って、坊やの手にぴったりの毛糸の手袋を買ってやろうと思いました。

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といいましたが、かあいい坊やの手に霜焼しもやけができてはかわいそうだから、夜になったら、町まで行って、ぼうやのお手々にあうような毛糸の手袋を買ってやろうと思いました。

暗い暗い夜が風呂敷のような影を広げて、野原や森を包みにやってきましたが、雪があまりにも白いので、包んでも包んでも白く浮き上がっていました。

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暗い暗い夜が風呂敷ふろしきのような影をひろげて野原や森を包みにやって来ましたが、雪はあまり白いので、包んでも包んでも白く浮びあがっていました。

きつねの親子は巣穴から出ました。

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親子の銀狐は洞穴から出ました。

子どものほうはお母さんのお腹の下にもぐり込んで、そこからまんまるな目をぱちぱちさせながら、あっちこっちを見ながら歩いて行きました。

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子供の方はお母さんのおなかの下へはいりこんで、そこからまんまるな眼をぱちぱちさせながら、あっちやこっちを見ながら歩いて行きました。

やがて、前の方にぽつんと明かりが一つ見え始めました。

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やがて、行手ゆくてにぽっつりあかりが一つ見え始めました。

それを子きつねが見つけて、

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それを子供の狐が見つけて、

「お母ちゃん、お星さまって、あんな低いところにも落ちてるんだね」

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「母ちゃん、お星さまは、あんな低いところにも落ちてるのねえ」

と聞きました。

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とききました。

「あれはお星さまじゃないのよ」

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「あれはお星さまじゃないのよ」

と言ったとき、お母さんきつねの足はすくんでしまいました。

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と言って、その時母さん狐の足はすくんでしまいました。

「あれは町の明かりなんだよ」

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「あれは町のなんだよ」

その町の明かりを見たとき、お母さんきつねは、以前お友達と一緒に町へ出かけて行って、ひどい目にあったことを思い出しました。

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その町の灯を見た時、母さん狐は、ある時町へお友達と出かけて行って、とんだめにあったことを思出おもいだしました。

やめなさいと言っても聞かないで、お友達のきつねがある家のあひるを盗もうとしたので、農家の人に見つかって、さんざん追い回されて、命からがら逃げたのでした。

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およしなさいっていうのもきかないで、お友達の狐が、る家の家鴨あひるを盗もうとしたので、お百姓ひゃくしょうに見つかって、さんざ追いまくられて、命からがら逃げたことでした。

「お母ちゃん何してるの、早く行こうよ」

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「母ちゃん何してんの、早く行こうよ」

と子きつねがお腹の下から言うのでしたが、お母さんきつねはどうしても足が進まないのでした。

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と子供の狐がお腹の下から言うのでしたが、母さん狐はどうしても足がすすまないのでした。

そこで仕方なく、坊やだけを一人で町まで行かせることになりました。

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そこで、しかたがないので、ぼうやだけを一人で町まで行かせることになりました。

「坊や、お手々を片方出しなさい」

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「坊やお手々を片方お出し」

とお母さんきつねが言いました。

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とお母さん狐がいいました。

その手を、お母さんきつねはしばらく握っているうちに、かわいい人間の子どもの手に変えてしまいました。

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その手を、母さん狐はしばらく握っている間に、可愛いい人間の子供の手にしてしまいました。

坊やのきつねはその手を開いたり握ったり、つねってみたり、においをかいでみたりしました。

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坊やの狐はその手をひろげたり握ったり、つねって見たり、いで見たりしました。

「何か変だな、お母ちゃん、これなあに?」

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「何だか変だな母ちゃん、これなあに?」

と言って、雪の明かりの中で、人間の手に変えられてしまった自分の手をじっと見つめました。

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と言って、雪あかりに、またその、人間の手に変えられてしまった自分の手をしげしげと見つめました。

「それは人間の手よ。いいかい坊や、町へ行ったらたくさん人間の家があるからね、まず表に丸いシルクハットの看板がかかっている家を探すんだよ。それが見つかったらね、トントンと戸を叩いて、こんばんはって言うんだよ。そうするとね、中から人間がちょっとだけ戸を開けるからね、その戸の隙間からこっちの手、ほらこの人間の手を差し入れてね、この手にちょうどいい手袋をくださいって言うんだよ。わかったね、絶対にこっちのお手々を出しちゃだめよ」

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「それは人間の手よ。いいかい坊や、町へ行ったらね、たくさん人間の家があるからね、まず表にまるいシャッポの看板のかかっている家をさがすんだよ。それが見つかったらね、トントンと戸をたたいて、今晩はって言うんだよ。そうするとね、中から人間が、すこうし戸をあけるからね、その戸の隙間すきまから、こっちの手、ほらこの人間の手をさし入れてね、この手にちょうどいい手袋頂戴って言うんだよ、わかったね、決して、こっちのお手々を出しちゃ駄目だめよ」

とお母さんきつねは言い聞かせました。

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と母さん狐は言いきかせました。

「どうして?」

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「どうして?」

と坊やのきつねは聞き返しました。

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と坊やの狐はききかえしました。

「人間はね、相手がきつねだとわかると、手袋を売ってくれないんだよ。それどころか、つかまえて檻の中に入れてしまうんだよ。人間ってほんとうに怖いものなんだよ」

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「人間はね、相手が狐だと解ると、手袋を売ってくれないんだよ、それどころか、つかまえておりの中へ入れちゃうんだよ、人間ってほんとにこわいものなんだよ」

「ふーん」

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「ふーん」

「絶対にこっちの手を出しちゃいけないよ。こっちの方、ほら人間の手の方を差し出すんだよ」

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「決して、こっちの手を出しちゃいけないよ、こっちの方、ほら人間の手の方をさしだすんだよ」

と言って、お母さんきつねは持ってきた二枚の白銅貨を、人間の手の方に握らせてやりました。

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と言って、母さんの狐は、持って来た二つの白銅貨はくどうかを、人間の手の方へ握らせてやりました。

子きつねは、町の明かりを目印に、雪明かりの野原をよちよちと歩いて行きました。

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子供の狐は、町のを目あてに、雪あかりの野原をよちよちやって行きました。

最初は一つだけだった明かりが二つになり三つになり、しまいには十にも増えました。

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始めのうちは一つきりだった灯が二つになり三つになり、はては十にもふえました。

きつねの子どもはそれを見て、明かりには星と同じように、赤いのや黄色いのや青いのがあるんだなと思いました。

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狐の子供はそれを見て、灯には、星と同じように、赤いのや黄いのや青いのがあるんだなと思いました。

やがて町に入りましたが、通りの家々はもうみんな戸を閉めてしまっていて、高い窓から温かそうな光が道の雪の上に落ちているだけでした。

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やがて町にはいりましたが通りの家々はもうみんな戸をめてしまって、高い窓から暖かそうな光が、道の雪の上に落ちているばかりでした。

でも表の看板の上にはだいたい小さな電灯がともっていましたので、子きつねはそれを見ながら帽子屋を探して歩きました。

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けれど表の看板の上には大てい小さな電燈がともっていましたので、狐の子は、それを見ながら、帽子屋を探して行きました。

自転車の看板や眼鏡の看板、その他いろんな看板が、あるものは新しいペンキで描かれ、あるものは古い壁のようにはげていましたが、町に初めて来た子きつねにはそれらが何なのか全然わかりませんでした。

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自転車の看板や、眼鏡めがねの看板やその他いろんな看板が、あるものは、新しいペンキでかれ、るものは、古い壁のようにはげていましたが、町に始めて出て来た子狐にはそれらのものがいったい何であるか分らないのでした。

とうとう帽子屋が見つかりました。

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とうとう帽子屋がみつかりました。

お母さんが道々よく教えてくれた、黒い大きなシルクハットの帽子の看板が、青い電灯に照らされてかかっていました。

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お母さんが道々よく教えてくれた、黒い大きなシルクハットの帽子の看板が、青い電燈にてらされてかかっていました。

子きつねは教えられた通り、トントンと戸を叩きました。

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子狐は教えられた通り、トントンと戸を叩きました。

「こんばんは」

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「今晩は」

すると、中では何かことこと音がしていましたが、やがて戸が少しガラッと開いて、光の帯が道の白い雪の上に長く伸びました。

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すると、中では何かことこと音がしていましたがやがて、戸が一寸ほどゴロリとあいて、光の帯が道の白い雪の上に長く伸びました。

子きつねはその光がまぶしかったので、うろたえて、間違えた方の手を、――お母さんが出しちゃいけないとよく言い聞かせていた方の手を、隙間から差し込んでしまいました。

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子狐はその光がまばゆかったので、めんくらって、まちがった方の手を、――お母さまが出しちゃいけないと言ってよく聞かせた方の手をすきまからさしこんでしまいました。

「このお手々にちょうどいい手袋をください」

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「このお手々にちょうどいい手袋下さい」

すると帽子屋さんは、おやおやと思いました。

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すると帽子屋さんは、おやおやと思いました。

きつねの手です。

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狐の手です。

きつねの手が手袋をくれと言っているのです。

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狐の手が手袋をくれと言うのです。

これはきっと木の葉を本物のお金に見せかけて買いに来たんだなと思いました。

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これはきっとで買いに来たんだなと思いました。

そこで、

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そこで、

「先にお金をください」

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「先にお金を下さい」

と言いました。

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と言いました。

子きつねは素直に、握ってきた白銅貨を二枚、帽子屋さんに渡しました。

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子狐はすなおに、握って来た白銅貨を二つ帽子屋さんに渡しました。

帽子屋さんはそれを人差し指の先に乗せてカチ合わせてみると、チンチンとよい音がしましたので、これは木の葉じゃない、本物のお金だと思い、棚から子ども用の毛糸の手袋を取り出してきて子きつねの手に持たせてやりました。

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帽子屋さんはそれを人差指ひとさしゆびのさきにのっけて、カチ合せて見ると、チンチンとよい音がしましたので、これは木の葉じゃない、ほんとのお金だと思いましたので、たなから子供用の毛糸の手袋をとり出して来て子狐の手に持たせてやりました。

子きつねはお礼を言って、また元来た道を帰り始めました。

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子狐は、お礼を言ってまた、もと来た道を帰り始めました。

「お母さんは人間は怖いものだって言っていたけど、ちっとも怖くないや。だって僕の手を見てもどうもしなかったもの」

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「お母さんは、人間は恐ろしいものだって仰有おっしゃったがちっとも恐ろしくないや。だって僕の手を見てもどうもしなかったもの」

と思いました。

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と思いました。

でも子きつねは、いったい人間ってどんなものか見てみたいと思いました。

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けれど子狐はいったい人間なんてどんなものか見たいと思いました。

ある窓の下を通りかかると、人間の声がしていました。

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ある窓の下を通りかかると、人間の声がしていました。

何ていうやさしい、何ていう美しい、何ていうおっとりした声なんでしょう。

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何というやさしい、何という美しい、何と言うおっとりした声なんでしょう。

「ねむれ ねむれ

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「ねむれ ねむれ

母の胸に、

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母の胸に、

ねむれ ねむれ

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ねむれ ねむれ

母の手に――」

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母の手に――」

子きつねは、その歌声はきっと人間のお母さんの声にちがいないと思いました。

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子狐はその唄声うたごえは、きっと人間のお母さんの声にちがいないと思いました。

だって、子きつねが眠るときにも、やっぱりお母さんきつねが、あんなやさしい声でゆすぶってくれるからです。

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だって、子狐が眠る時にも、やっぱり母さん狐は、あんなやさしい声でゆすぶってくれるからです。

すると今度は、子どもの声がしました。

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するとこんどは、子供の声がしました。

「お母ちゃん、こんな寒い夜は、森の子きつねは寒い寒いって泣いてるでしょうね」

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「母ちゃん、こんな寒い夜は、森の子狐は寒い寒いっていてるでしょうね」

するとお母さんの声が、

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すると母さんの声が、

「森の子きつねもお母さんきつねのお唄を聞いて、巣穴の中で眠ろうとしているでしょうね。さあ坊やも早くねんねしなさい。森の子きつねと坊やとどっちが早くねんねするか、きっと坊やの方が早くねんねしますよ」

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「森の子狐もお母さん狐のお唄をきいて、洞穴ほらあなの中で眠ろうとしているでしょうね。さあ坊やも早くねんねしなさい。森の子狐と坊やとどっちが早くねんねするか、きっと坊やの方が早くねんねしますよ」

それを聞くと子きつねは急にお母さんが恋しくなって、お母さんきつねの待っている方へ飛んで行きました。

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それをきくと子狐は急にお母さんが恋しくなって、お母さん狐の待っている方へんで行きました。

お母さんきつねは心配しながら、坊やのきつねが帰ってくるのを今か今かとふるえながら待っていましたので、坊やが来ると、温かい胸に抱きしめて泣きたいほどよろこびました。

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お母さん狐は、心配しながら、坊やの狐の帰って来るのを、今か今かとふるえながら待っていましたので、坊やが来ると、あたたかい胸に抱きしめて泣きたいほどよろこびました。

二匹のきつねは森の方へ帰って行きました。

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二匹の狐は森の方へ帰って行きました。

月が出たので、きつねの毛並みが銀色に光り、その足あとにはコバルト色の影がたまりました。

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月が出たので、狐の毛なみが銀色に光り、その足あとには、コバルトの影がたまりました。

「お母ちゃん、人間ってちっとも怖くないや」

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「母ちゃん、人間ってちっともこわかないや」

「どうして?」

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「どうして?」

「坊、間違えてほんとうのお手々を出しちゃったの。でも帽子屋さん、つかまえなかったもの。ちゃんとこんないい温かい手袋をくれたもの」

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「坊、間違えてほんとうのお手々出しちゃったの。でも帽子屋さん、つかまえやしなかったもの。ちゃんとこんないい暖い手袋くれたもの」

と言って、手袋をはめた両手をパンパンやって見せました。

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と言って手袋のはまった両手をパンパンやって見せました。

お母さんきつねは、

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お母さん狐は、

「まあ!」

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「まあ!」

とあきれましたが、「ほんとうに人間はいいものかしら。ほんとうに人間はいいものかしら」

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とあきれましたが、「ほんとうに人間はいいものかしら。ほんとうに人間はいいものかしら」

とつぶやきました。

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とつぶやきました。